いつも色々考えて研いでいるんですが、その内容は主に3つ。
①良く切れること。
研ぐ目的は何をさておき切れる事です。
これは絶対です。
切れるようにしつつ、研磨による包丁の減りを最小限にする事も念頭に置き研いでいます。
②切れ味が長持ちすること。
鋼の包丁は切れ味を求めてとことん研いでもその切れ味が長持ち(長切れ)します。
ですが、ステンレス包丁に関してはその瞬間の切れ味重視でとことん研いでしまったら長切れしなくなります。
もちろん鋼、ステンレスと一言で言ってもどちらもピンキリ。
1本1本の刃の材質と性質を見極め、切れ味とその持ちのバランスを考えながら最適解で研ぐように心がけています。
③お客様の使用目的や好みに合わせる。
同じ包丁でも使う人の用途や希望によって研ぎ方を変える必要があります。
硬い物を切る用、肉を主に切る用、野菜しか切っていない、長切れしなくてもいいからとにかく切れ味重視を希望、両刃の包丁だけど左利き用の片刃っぽい感じにしてほしい、先が尖っているのは苦手なので丸くしてほしい、等々。
いつも私が考えるその包丁のベストと思われるゴールを目指して研いでいますが、仕上げに関してご希望がある方はお気軽にご相談ください。
ちなみにもしもこんなご要望があったらと考えると「うーーーーん(悩)」となるものがあります。
まだお客様からは言われた事はありませんが、知り合いから「切れすぎると怖いからそこそこに研いで欲しい」と言われた事があります。
20年以上最高の切れ味と長切れを目指して研いでいるので、正直「そこそこ」を目指した事がありません。
もしもお客様から言われたら「取り合えず私が思うベストな状態でお渡ししますので、一度使ってみて頂いて切れすぎて怖いと思ったら、皿の裏に直角に包丁を当てて引いて刃を少し鈍らせてください。」
と答えるんだろうなと思います。
話が逸れましたが、上記3つ以外に考える事がもう1つあります。
「この包丁を使った時に喜んでもらえるように」
①~③を手抜きをせずにしっかりすれば自ずとそうなるとは思いますが、包丁研ぎの出来栄えのその向こうを考えてしまうのは私の欲なんだろうなと思います。
昔、切れる包丁を初めて使った時の感動を忘れられないどころか、包丁が切れる事にいまだに毎日感動しています。
私は研ぎ師ですが、お客様と同じ1包丁ユーザーでもあります。
お客様にも私と同じように、切れる包丁を使う喜びを感じて頂けたらと願っています。
ちなみに研いでる時はそんなこんなを考えて集中して研いでいますが、話しかけても全然大丈夫なので遠慮せずに声をかけてください。
研ぐのと同じくらい包丁に関しての話をするのが大好きなので。😊
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