シャープナーでの研ぎと、砥石での研ぎ、包丁を研ぎ切れるようにするという同じ目的なのに、実は全然違うんです。
来店されるお客様から「シャープナーで研いでも良く切れなくて」とか「シャープナーで研ぐとその時は切れるけどすぐに切れなくなります」と言われる事がちょくちょくあります。
「包丁を研いで切れる状態にする」と言う意味では砥石を使った研ぎもシャープナーでの研ぎも目標とするところは変わりません。
ですが、両者の間には根本的に違う事がいくつかあります。
砥石で研いだ包丁(左)とシャープナーで研いだ包丁(右)をご覧ください。
上段が横から見た図、下段が包丁の根本の部分から見た図です
相変わらず絵が下手という事はさておき。。。
横から見た図の砥石(左)は刃先がギザギザののこぎりのようになっています。
このギザギザがある事により、食材に食いつき、そこから切り進められていきます。
包丁を使って行くうちに、ギザギザの山の部分が摩耗して無くなっていき、谷の所まで来てまっすぐになってしまうのが切れなくなった状態です。
シャープナー(右)では、そのギザギザが元々ありません。
これはシャープナーに対して包丁を縦に滑らして研ぐ性質上、ギザギザが出来ないのです。
なので、下段のように同じ角度の刃先だとしても、シャープナーで研いだ物は砥石で研いだ物に比べてギザギザがないのですぐに切れなくなってしまうのです。
次にこちらの図をご覧ください。
これは研ぐことが可能な範囲を赤で示した図です。
左が砥石で右がシャープナーです。
砥石で研ぐ際には包丁の砥石に当てる角度を変える事により、包丁の厚さを必要最小限まで薄くする事が出来ます。
これにより食材へ切り込んで行く時の抵抗が減り、スイスイと切る事が出来るようになります。
逆に厚くも出来るので、欠けやすい包丁や硬い物を切る包丁にも対応出来ます。
砥石での研ぎであれば図の赤線を自由自在に研げるのです。
一方でシャープナーは刃先のほんの1ミリ程度の場所しか研げません。
これにより刃先は研げるが包丁自体は厚いままなので、その厚さが食材に対しての抵抗になり切れ味が良くありません。
次にシャープナーで研いだ時になりがちな刃の変形についてです。
こちらは先日店頭に来られたお客様が「シャープナーで研いでいたけれど全然切れないし包丁が変な形になってしまいました。」と言い持って来られた包丁です。
※お客様に許可を得て掲載しています
変形がひどいので捨てた方がいいとは思いつつ、長年使っていて手になじんでいて捨てられず、近くで当店が包丁研ぎをしていると知り持参されたそうです。
シャープナーでは刃先のみしか研げないので、刃先1ミリ前後以外は刃がかなり厚くなっています。
また、シャープナーでは包丁のアゴの部分(根本のあたり)が研ぎにくいのでアゴ以外の場所だけが研ぎ減り、アゴが出ているようになってしまっています。
そしてこちらが当店で研いだ後の状態です。
切っ先からアゴまで満遍なく研げるので、ラインを整える事が可能です。
また、必要以上に厚くなった刃先を薄くし、切れ味を良くする事も砥石であれば可能です。
目視では確認できませんが、刃先には先述したギザギザののこぎりの様な刃も出来るので、シャープナーに比べて切れ味が長持ちします。
このように、包丁を使い方に合ったベストな状態にし、なおかつ長く切れるようにするには砥石での研ぎが必須となります。
ちなみにお客様はあまりの変形に包丁を捨てる覚悟もしていたようで「これからもずっとこの包丁を使います!」と大変喜んで帰られました。
Comments