店頭で包丁を販売していると聞かれることがあります。
「どの包丁がお勧めですか？」
堺の鋼の包丁に目覚めたあの日からその切れ味に魅了されて早２０年以上。
無条件なら当然鋼の包丁を１００％推します。迷い無く。
ですが、きらら工房店頭では全てのお客様に鋼の包丁を勧めているかと言うと全くそんな事はありません。
日本の鋼の包丁は世界一の品質、性能です。
素晴らしい技術を持った職人の集団が造った鋼の包丁を、せっかく日本人に生まれたからには一度は使って欲しいと心から思います。
ただ、そんな素晴らしい鋼の包丁と言えども日常生活の中で使用する道具です。
使ってこそその真価を発揮できる包丁なので、使おうと思って購入したのに万が一使わずにしまい込んでしまうような事になったらどんな素晴らしい包丁もただの金属の塊です。
昔鋼の包丁を友人にプレゼントした事があります。
最初はその切れ味に感動してとても喜んでくれました。
その後、「実はね…」と沈んだ顔で包丁を持って来ました。
鋼の包丁に関しては「錆びやすい」「欠ける事がある」と言うのを前提にいくつか注意事項を伝えていましたが、うっかり半解凍の物を切って欠けてしまったようです。
人間もそうですが、毎日働いていたらどんなに気を付けていても怪我をしたり病気になったりする事があります。
包丁も同じで、毎日使っていたら欠けたり曲がったり錆びたり色々な事があります。
友人の包丁は欠けを取り研ぎ直してまた素晴らしい切れ味の状態にして渡しました。
その後連絡が来て「錆びがすぐにできる」とのこと。
鋼の包丁は水回りで使う物なので少し気を抜くと錆びます。
その時は「これがあれば日常の軽い錆びを簡単に落とせるよ」と錆取り消しゴムを渡しました。
その次に友人に会った時にはこう言っていました。
「ここぞ！と言う時だけ使ってるよ」
おそらくそれ以外の時は使っていないのでしょう。
「何かトラブルがあっても真っ二つに割れたりしない限りリカバー出来るよ」と伝えましたが、その後その友人からは包丁に関する話はありません。
私は自分が元来面倒くさがり屋で大雑把なのに、包丁の管理に関しては全く苦にならないので、友人も鋼の包丁の良さを知ったらその管理も苦にならないと勝手に考えていました。
この事があってからは「お勧めの包丁は？」と聞かれたらお客様の今まで使用していた包丁や管理に関するモチベーションを確認しながら「使い続ける事ができる包丁」をお勧めするようにしています。
きらら工房をしている目的の一つに
「一人でも多くの人の人生に良い包丁を」
というのがあります。
良い包丁とは毎日の生活の中で活躍し、それを使う事で料理が楽しくなったり「これを買って良かった」と思える包丁です。
私が包丁を使う時に毎日その切れ味にときめいてしまうように、鋼かステンレスかを問わずに使う方に合ったベストな包丁との出会いを提供でき、ときめいてもらえたらいいなと思っています。
ちなみに包丁に関しての相談はきらら工房の店頭にある包丁だけでなく、他で売っている包丁に関してでも全然大丈夫です。
いつでもお気軽にご相談ください。
※包丁の話が大好きなので、ちょっと長くなるかもしれませんがご了承ください。☺
Commentaires