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きゅうりの繋がる謎

先日お客様が包丁を2本持って来ました。

両方とも文化包丁です。

「きゅうりを切るとつながっちゃうんです」と言うので刃を見たら、1本に刃のラインの変形があるものの、2本とも刃先は真っすぐに近く、ちゃんと切れそうな感じでした。


まな板が凹んでいないか確認しましたが、多分凹んでいないとのこと。


よくよく聞くと、1本はちゃんと切れるけれど、もう1本(刃先は真っすぐだが全体的に変形があるもの)だとつながって切り切れないそうです。


このように切りきれなくて繋がっちゃう場合の典型的なパターンが2つあります。


① まな板が凹んでしまっている。


② 包丁の真ん中あたりの刃先が研ぎムラで凹んでしまっている。

絵(毎度へたですみません)で描くとこのような感じです。




原因としては、シャープナーで研いでいたり、ご自分で砥石で研ぐ時に、先端部分と付け根付近で2回に分けて研ぐと真ん中を重複して研ぐ事になり凹んでいる事があります。


それでは今回のお客様の包丁2本です。


左がきゅうりをちゃんと切れる包丁、右がつながってしまう包丁。


右は先端部分ばかり研いでしまい、付け根付近はあまり研がない為にこのような形になったと思われます。

ですが、あくまでも刃先は真っすぐであり、きゅうりが繋がるような変形の仕方ではありません。

では何故この包丁だけ繋がるのか?


それはお客様の台所の作業台の高さとお客様の身長のバランスにありました。


身長に合っている高さであれば手首の角度に比較的余裕があるので、自然と包丁の刃先の角度に合わせて切る事ができます。

ですが、今回の場合は作業台が高く、先端が研ぎ減った包丁ですと、手首を少し上に上げて切らないと先端がまな板から浮いてしまいます。

作業台が高いと手首を上に上げながらの作業が難しく、結果きゅうりが繋がってしまったと思われます。


お客様に確認すると、確かに自分の身長に合っていなくて高めの作業台と言うことでした。


研ぎ作業は持ち込まれた包丁をよく見るところから始まります。

そしてその包丁を使うお客様の話を聞き、総合的にどう研げばそのお客様の元で包丁が良い仕事をし、快適に使っていただけるかを考えて研いでいます。


今回の包丁は付け根付近を中心に研いで変形を直し刃を付けました。

研いだ包丁がお客様の元で良い仕事しますように、と願いつつ「きゅうりが繋がらず切れたかどうかまた教えてくださいね」と声を掛けお渡ししました。


いつも1本1本の包丁を自分の知識と技術のベストで研いでいますが、その結果は研いだ包丁を見てもわかりません。

家に帰り、使われて初めて結果がわかります。


「良く切れるようになりました」と言う言葉を聞くために、いつもあれこれ考えながら楽しく研いでいます。😊

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